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アガルートのマーケティング戦略:代理店から事業会社への視点の変化とキャリアパス

Photo by Headway on Unsplash

今回は、アガルート代表の岩崎と、ゼネラルマネージャー柿原の対談をお届けします。広告代理店での経験を経て事業会社へ転身したゼネラルマネージャーが語る、マーケティングの本質、キャリアの変遷、そしてこれからの展望に迫ります。


【代理店から事業会社への転職で苦労したこと】

岩崎: 前職が広告代理店で、特にウェブを担当されていたとのことですが、事業会社であるアガルートに転職されて、戸惑ったことや苦しかったことはありましたか?

柿原: 一番はCPAで語れないところですね。広告代理店ではCPAやROASが鉄板の指標で、広告プランとしては正しいと思います。しかし、事業責任者からすると、CPAやROASが良いからといって事業がグロースするわけではないんですよね。例えば、広告クリエイティブがすごく良いと話しても、実際に事業が伸びているかというと、そうではない。マイクロな改善や業界の常識が一切通用しなかったのが、大変苦しかったです。

岩崎: そうですよね。事業会社としては、資料請求や受講相談に繋がっても、最終的に商品を購入していただかなければ売上はゼロですからね。資料請求から商品購入までの後工程は、代理店だとほとんど見ることができないですもんね。

柿原: そうなんです。大手の会社だと、そもそもデータが開示されないことも多く、何が良かったのか悪かったのか、成果判断が管理画面の指標に終始してしまう。これではAIに任せても差が出ないという話になってしまいます。

岩崎: 「ホットリードが取れた」とか「CPAを良くした」というのは、お金を生み出していないという自覚を持つことが大事、ということですね。

【事業会社での学びと成長】

岩崎: そのCPAだけではダメだということに気づけたきっかけは、どのようなことだったんですか?

柿原: 代理店出身者はマーケティングのプロだと思われがちですが、それはあくまで「手法のプロフェッショナル」であって、「戦略」を考えた経験がほぼないんですよ。岩崎さんとのコミュニケーションの中で、「司法試験の売上を最大化するために、どういう戦略を練りますか?」と問われた時に、私は「P-MAXで…」とか手法ベースでしか考えられなかったんです。でも、岩崎さんは「ユーザーベース」、つまり「パーチェスファネル」の観点から考えることを教えてくださった。この戦略の部分から考える機会を与えてくれたことが、私のマインドシフトになったと思います。

岩崎: 事業の中身となると、講座の内容、講師、テキスト、受講相談のトークスクリプトなど、変えなければいけないことは無限にありますよね。そのあたりはどのように順序立ててクリアしていったのですか?

柿原: 一言で言うと「相関関係と因果関係」ですね。基本的に全てを因果関係で解く、という考え方です。代理店の人は聞いていてほしいんですが、相関関係で解くというのは、例えばGoogleでもYahoo!でもFacebookでもCPAが良いから全部配信しよう、というようなことです。しかし、広告の成果が発生した時に、どの媒体が本当に良かったのか、因果関係は解けないじゃないですか。となると、本当のクリティカルリーチはできないので、各々の因果関係を解けるレベルまで機能を限定することが重要だと考えました。

例えば、広告を出すことで購入まで行くのは、前提として他にも多くの要素がある中で疑問ですよね。Googleさんは「GAで見てください」と言いますが、GAはGoogleプロダクトがよく見えるようにモデル化されている。だから、この広告で直接因果が解けるのは「LINEに送るところまで」とか。その次は「LINEから受講相談のステップに進めているか」は因果が解ける。でも、それが飛躍して購入となると、レピュテーションや口コミのおかげかもしれない。このように、因果関係が解けなくなるような領域では期待しすぎないことが肝だと思います。

岩崎: 事業の場合、例えば「講座が良いか悪いか」という定義も様々で、価格、講師の分かりやすさなど、定量的・定性的な要素が絡み合いますよね。CPAであれば「1万円で資料請求1件取る」とフォーカスできますが、事業の実態に着目するとドライバーが多すぎるし、定量で語り尽くせない部分も多いので難しいですよね。

柿原: 難しいですね。P-MAXのような自動化は、代理店からすれば人件費を抑えられるメリットがあると思いますが、事業会社から見るとどうでしょうか?

柿原: まさにその通りです。P-MAXは運用するにあたってドライバーが少ないため、楽は楽ですが、因果関係が分からなくなる。代理店側はコストを落とせるものの、顧客の納得度は落ちるんじゃないかな、と。それに、P-MAXは究極的に目標にアジャストするので、検索にめちゃくちゃ寄ったり、逆に指名検索で無駄に高いCPCになったりすることもあります。除外設定ができても因果関係が解けないので、代理店としては説明責任が果たしにくく、人件費カットとリプレースリスクがトレードオフになっていないと思います。

岩崎: P-MAXは広く浅く、マス向けの商材には向いている気がしますが、我々のような司法試験など、ターゲットが限定的なニッチな商材にはあまりワークしないですよね。

柿原: おっしゃる通りです。出口商材のハードルも高いですからね。通販コスメのように出口のレベルが低く、クロスセルも容易な商材とは不向きだと感じます。

【柿原さんの今後の展望】

岩崎: アガルートに入られて5~6年経ち、今やマーケティング責任者というより事業責任者レベルの視点を持たれていると思いますが、ご自身がステップアップしたと感じる瞬間はありましたか?

柿原: コロナ禍は一つの転機になったと思います。コロナは追い風でしたが、落ち着いてきたタイミングで外的環境が厳しくなった時に、従来の考え方から脱却する必要があると感じました。プロモーションだけで考えるのではなく、4P全体で考えないと話にならないと。また、マーケターはプロモーションから考えがちですが、他の部分をハックした方がインパクトが高いことに気づきました。やれる手段を1から10まで見た時に、3をやり続けるよりも、他に行った方が良い、と。当時は激変でしたからね。

岩崎: アガルートではウェブマーケティングと言われるもの全てやっていますが、チーム間の連携で気をつけていることはありますか?

柿原: 失敗談からお話すると、初めは全員に情報を共有しようと、マーケティング室の全員を集めて説明していました。しかし、50人弱いる組織なので、足並みは揃わないし、キャッチアップできる人・できない人が出てきてしまう。そこで、リーダー層にビジョンをコミットするために時間を投資し、彼らから各部署に伝達してもらうようにしました。これにより、共通言語が生まれ、クリエイティブチームやSEO、広告チームが円滑に連携できるようになりました。

もう一つは、クリエイティブに関して。CMのようにクリエイティブインパクトが全てを決めるという考え方ではなく、手前の段階でやれることを潰した上で、クリエイティブが要因になるタイミングで依頼をかける、ということです。デザイナーに求める要件も、「どういう成果を上げたい」ではなく、「どういう印象を持たせたいか」「どういう人をターゲットにするか」といった表現の部分にフォーカスできるようになります。因果関係を解くためのデータ収集と伝達、この2点がチーム間で気をつけていることですね。まだまだ課題は山積みですが。

【未経験者・転職者へのアドバイス】

岩崎: 視点を変えて、今求職中の方へアドバイスをお願いします。例えば、SEOの経験が2年くらいでアフィリエイトサイトを個人でやっていた方が、アガルートに興味を持っているとします。SEOで入社できると思いますが、そこから先のキャリアパスはどのように発展していくとお考えですか?

柿原: キャリアステップとしては、SEOの部分は、Googleや各社が出しているアップデート情報などを基準に、プロダクトテクニカルマーケティングとして真面目にページやドメインを強化していくことが求められます。入社後にそのレベルを見極め、アガルートのレベルに合うようにハックしてもらおうと考えています。

次に、事業レベルまでキャリアアップしたいとなると、プロダクトでどうやったらマネタイズできるかを意識してもらう必要があります。初めの数ヶ月から1年くらいはサーチコンソールなどと向き合い、その後は他のチームとの連携を深めます。例えば、SEOの集客ページから、よりコンバージョンを増やすにはどういう導線が良いか、ナーチャリングするにはどうするか、といったことを考えます。PVをハックするのがテクニカルマーケティングだとすると、CVをハックするには他のプロダクトを見る必要があるからです。

具体的には、SEO以外の集客方法、例えばLINEやメールマガジン、既存顧客のナーチャリングなどにも関わってもらいます。そうすることで、集客の部分からマネタイズまで分かるようになります。そうすると、マーケティングの4Pのうち、プロモーションが分かったら、次はプロダクトの部分を理解してみよう、という話になります。今度はマーケティング室レベルの話だけでなく、営業部や物流、制作など、他部署との連携を通じて、新しい企画で件数コミットできるか、といった視点も養っていきます。

プロモーションを軸に、プロダクトなど様々なチャネルを経験していくイメージですね。そうすると、マネージャーになって年収も上がっていく。これは大体4年くらい、うちのロールモデルだと3年くらいで到達できる人もいます。個人や代理店ではここまでできないですし、事業レベルで、しかもかなりハイレベルな環境で経験を積める。自分のレベルに合わせてアジャストし、本当の意味で「物を売れるマーケター」、そして「事業を動かせる人」になっていけると思います。

岩崎: 柿原さんのように広告もやりたい、という人もいると思いますが、SEOから出発して事業視点を身につけた場合、広告を学びたいとなるとどうしますか?

柿原: もういくらでも学んでほしいです。アガルートは基本的に「やりたい」という気持ちを拒まない会社です。失敗にも寛容で、大事なのは失敗した時に、なぜダメだったのか、という仮説を立て、会社にも自分にもアセットになるように考えることです。広告もやってみよう、というのはいくらでもできると思います。

岩崎: あるキーワードをオーガニックで取るか、広告で取るかというのは、マーケターにとって永遠の課題ですよね。順位が落ちたら広告で補完するなど、流動的な対応が求められるので、両方の視点がないと難しいと思います。

柿原: まさにその通りです。だからこそ、SEOから入って広告も業務外でしっかり勉強していくという環境がアガルートにはあります。研修教材も豊富ですし、通信講座という成り立ちから、レベルの高いウェブ講座なども受講できるので、ファンダメンタルスキルを学びながら他のプロダクトについても視野を広げてチャレンジできます。やらない理由はないと思います。

岩崎: 未経験からリーダーになっているメンバーもいますが、人の成長にコミットするというのは本当にすごいなと思います。未経験からリーダーになるまでのステップはどのように設計されたのですか?

柿原: ありがとうございます。まず大前提として、マーケティング経験者と未経験者の生涯的なスキルレベルは、僕あまり変わらないと思っています。世の中に広まっているウェブマーケターに関する情報は、先人が成功した方法をどこまで真似られるか、というゲームになりがちです。それは相関関係で語れるレベルで、誰でもできる。これは「知識」の話ですが、「知恵」はまた違います。

アガルート、というかマーケターで一番大事なのは「知恵」の部分です。知識は学べば良いですが、「なぜそうだったのか」を追求できるかが一番重要です。入社後は、各プロダクトのOJTや教育を受けつつ、ひたすら「なんでこうだったのか」を考え抜く期間を設けます。そして、その「なんでだったのか」を人に伝えられないといけないので、四半期に1回プレゼンテーションを実施しています。私だけでなく営業本部のジェネラルマネージャーにも見てもらい、「なんで」の部分をコンパクトに人に伝える練習を繰り返すんです。これで因果関係が解けるようになるので、伸びるための土台が整います。あとは知識を蓄えるだけなので、これは簡単ですよ。

岩崎: 一般的にマーケターになるために必要なものは、やはり「知恵」、自分の頭で考えていくこと、ということですね。

柿原: まさにその通りです。一番簡単で、しかも無料でできる、僕が実践していたことをお伝えします。電車に乗った時に中吊り広告を見てください。時間帯や路線によって、なぜこの塾の広告が出ているのに、別の路線では出ていないんだろう、とか、昼間の時間帯はなぜ空き枠が多いんだろう、といったことを考えてみてください。あとは、チラシを頻繁に送ってくる大企業の決算書を見てほしいですね。IR情報など、マーケティング知識がなくても分かりやすく開示されているものも多いです。

岩崎: 決算書ですか!

柿原: はい。チラシ1枚が自分の手元に届くまでに、いくらお金がかかっているんだろう、と思いますよね。数億円、数百億円かけているということは、絶対に何かの意図があるはずです。そこで伝えたいメッセージは何だろう、と言語化してみることは非常に大事です。なぜ僕なんだろう、なぜこういうメッセージなんだろう、この時期でこのタイミングで毎回くるのはなぜだろう、と。

岩崎: 確かに、私も子供がいるので、某教育系のキャラクターの無料体験教材がすごい頻度で送られてきますね。どうやって回収するんだろう、と常々思います(笑)。

柿原: まさにその通りです!「どうやって回収するんだろう」というところまで考えて生きていくこと。これが一番、日常に潜むマーケティングの知恵を養う上で大事だと思います。マーケティングはどこまでもビジネスにコミットするものなので、これを点として持っておけば、経営者目線への一番の近道になるんじゃないかなと思っています。

岩崎: 必ず見ますもんね。「これなんでだろう」とか「うちに取り入れたらどうなるだろう」とか、勝手に頭が動きます。そういう素養というか基礎体力を日々の生活の中から養ってほしい、ということですね。

【柿原さんの今後の目標】

岩崎: 最後に、マーケティングから始まり、事業視点も身につけ、スーパーマンになりつつある柿原さんですが、今後アガルートでやっていきたいことはありますか?

柿原: まず、アガルートとしては、参入しているあらゆる業界でシェアトップになりたいですね。その礎を築くことが、僕の中では一番です。

個人の話で言うと、様々なプロダクトでプロモーションの観点からはバリバリやらせていただいていますが、33歳なので、まだまだ及ばない観点がたくさんあると思っています。例えば、売上の部分にはかなりコミットしているものの、ビジネスにおけるアセットはマーケティングだけではありません。マーケティングでこうすれば良い、という一辺倒な考え方だと、経営者の岩崎さんとの乖離が生まれてしまう。岩崎さんは次々とすごいことを考えるので、ついていけなくなってしまいます。なので、私はもっと「経営者視点」を身につけていきたいと思っています。

岩崎: PL的な観点、売上だけでなく、ボトムライン、つまり利益をどう残していくか、といった視点ですね。M&Aを一緒にやる時なども、その会社の集客がちゃんとできるのか、改善ドライバーは何なのか、と考えますもんね。

柿原: 考えますね。岩崎さんはその観点と会計をこんなに見るのか、といつも思っています。集客手法もプロダクトや商材が変われば異なりますし、ホームページすらなくInstagram広告とLINE、カウンセリングだけでコンバージョンまで持っていく会社もあります。事業としては成立しているのに、我々とは全然違うアプローチで、まだまだ学ぶべきことは多いと感じますね。

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いかがでしたでしょうか?

マーケティングが単なるプロモーションではなく、事業全体に深く関わる奥深いものであることが伝わったのではないでしょうか。アガルートのマーケティングやキャリアパスに少しでも興味があれば、ぜひご応募ください。

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